山崎 千鶴子(信貴ヶ丘有隣会)
日ざし入る丸き柱の温かし萩きそひ咲く唐招提寺(おおてら)の庭
盲ひ給ふ和上の御影(みえい)かさね視る七堂伽藍寂びてゆかしき
過ぎてゆく刻の刹那を一会とし良夜きき入る清し虫の音
山も川も青く暮れゆく初秋の八尾(やつお)にながるる風の盆唄
足音なく寄りくる乙女の影優美(やさ)し踊り衣裳に匂ふ汗の香
せつせつと身裡にしみてひと恋しおわら盆唄胡弓のしらべ
うつし世の外(と)より洩るるか二上(ふたかみ)の雌雄(めお)の背てらす淡き夕月
かきつばた汀(なぎさ)に咲けば好き者と世に言ふ業平ふとなつかしき
万葉の園は風にも色のあり 寄りそひ咲ける秋の月草
天上の花籠(けこ)よりこぼるや山里の棚田を染めて曼殊沙華咲く
「はぎ乃」とふひびき優しき母の名を恋へば花野にそよぐ白萩
春日野をさまよふ鹿と分ち合ふつまなきさ夜のあはき哀しみ
「同期の桜」合唱(うた)へば戰時かへり来てせき上ぐ想ひ友と分てる
久米歌をなぞれば戰時の標語なり「撃ちてし止まむ」と一路すすみし
激動の昭和を越へて平成の終の新春矍鑠と生く
上堂の僧をみちびく松明の昇り来るをつつしみ迎ふ
あるかなき声明徐々に高まればうねりとなりて満ちゆくみ堂
覚えずも居ずまい正す二月堂五体倒地の行法とどろく
盲ひ給ふ和上の御影(みえい)かさね視る七堂伽藍寂びてゆかしき
過ぎてゆく刻の刹那を一会とし良夜きき入る清し虫の音
山も川も青く暮れゆく初秋の八尾(やつお)にながるる風の盆唄
足音なく寄りくる乙女の影優美(やさ)し踊り衣裳に匂ふ汗の香
せつせつと身裡にしみてひと恋しおわら盆唄胡弓のしらべ
うつし世の外(と)より洩るるか二上(ふたかみ)の雌雄(めお)の背てらす淡き夕月
かきつばた汀(なぎさ)に咲けば好き者と世に言ふ業平ふとなつかしき
万葉の園は風にも色のあり 寄りそひ咲ける秋の月草
天上の花籠(けこ)よりこぼるや山里の棚田を染めて曼殊沙華咲く
「はぎ乃」とふひびき優しき母の名を恋へば花野にそよぐ白萩
春日野をさまよふ鹿と分ち合ふつまなきさ夜のあはき哀しみ
「同期の桜」合唱(うた)へば戰時かへり来てせき上ぐ想ひ友と分てる
久米歌をなぞれば戰時の標語なり「撃ちてし止まむ」と一路すすみし
激動の昭和を越へて平成の終の新春矍鑠と生く
上堂の僧をみちびく松明の昇り来るをつつしみ迎ふ
あるかなき声明徐々に高まればうねりとなりて満ちゆくみ堂
覚えずも居ずまい正す二月堂五体倒地の行法とどろく